日本のオメガ3(DHA・EPA)供給源のこれからを考える

オメガ3(DHA・EPA)の市場において、魚油(フィッシュオイル)は長年にわたり主要な供給源として重要な役割を果たしてきました。
日本は、世界でも有数のオメガ3(DHA・EPA)先進市場であり、用途に応じて多様な供給基盤を築いてきました。サプリメントや機能性食品向けのDHA・EPA原料では、国内で精製・加工された魚油原料が広く用いられており、マグロ、カツオ、イワシなど、複数の魚種に由来する原料が使用されています。一般に、DHAではマグロ・カツオ由来、EPAではイワシを含む魚油が利用される例が多く見られます。さらに、サプライチェーン全体を見渡すと、養殖飼料や魚粉・魚油用途では、イワシ、サバ、スケソウダラ、加工残渣、輸入魚油なども重要な役割を担っています。こうした多層的な供給構造、高度な精製・加工技術、そして機能性食品市場の発展を背景に、日本のオメガ3関連産業は世界的に見ても高い競争力を有していると考えられます。
一方で、近年の世界市場では魚油を取り巻く環境が大きく変化しています。2026年、世界最大の魚油供給源であるペルー沖アンチョビ(カタクチイワシ)漁業では、漁獲量の減少、原料魚の脂質含量の低下、品質条件の変化、さらには禁漁措置が重なり、魚油供給に大きな影響が生じています。加えて、今後本格化が懸念されるエルニーニョ現象もあり、国際的な魚油市場はかつてない不確実性に直面しています。
こうした状況を受け、アーケル・バイオマリンでは「Fish Oil Supply Disruption(魚油サプライチェーンの課題: 一時的な供給不足から構造的な課題へ)」と題したホワイトペーパーを発行し、世界の魚油市場が直面する課題と今後の見通しについてまとめました。
ペルー沖アンチョビ(カタクチイワシ)漁業における記録的な不漁と、今後本格化が懸念されるエルニーニョ現象が重なることで、世界のオメガ3(DHA・EPA)サプライチェーンが構造的な転換点を迎えつつあるという分析を、グローバル市場向けにまとめたものです。ぜひご一読をいただければ幸いです。
一方で、日本市場は欧米市場とは事情が異なります。日本国内で流通するサプリメントや機能性食品向けDHA・EPA製品では、ペルー産アンチョビへの依存度が欧米市場に比較して低く、複数の魚種を組み合わせた一定の分散性を備えています。そのため、ホワイトペーパーが指摘する供給リスクは、日本特有の原料構成や精製・加工体制を踏まえて読み解く必要があります。
とはいえ、日本市場においても、輸入魚油価格の上昇や高濃度EPA・DHA原料の調達環境の変化といった形で、グローバル市場の影響はすでに一部で見られ始めています。また、養殖、水産飼料、医薬品、健康食品といった分野でEPA・DHAの需要拡大が続いており、原料魚種が異なる場合であっても、世界的な需給バランスの変化や代替原料への需要シフトが、日本市場の調達環境に中長期的な影響を及ぼす可能性は高いと考えられます。
加えて、魚油・魚粉の流通では、漁期や水揚げ量の変動が大きいため、一定の在庫や既存契約が短期的な供給ショックを吸収する役割を果たします。実際に、FAO GLOBEFISHは中国の魚粉港湾在庫が約29万トン、約4か月分の消費に相当すると報告しており、海洋性原料市場では在庫が価格や供給への影響を一定期間遅らせる要因となることが示唆されます。一方で、FAO GLOBEFISHは2026年前半の魚粉・魚油供給が2023年のエルニーニョによる混乱以降で最もタイトな水準にあるとも指摘しています。
したがって、日本では現時点で影響が限定的に見えていたとしても、粗油や中間原料の在庫が消化され、既存契約が更新されるタイミングで、2026年後半から2027年にかけて、価格上昇、調達リードタイムの長期化、高濃度EPA・DHA原料の確保難といった形で影響が顕在化する可能性があります。
ホワイトペーパーが示すように、世界の魚油需給は2027年以降に逼迫が本格化し、2031年には約16万トンの供給不足に達すると予測されています。原料の産地を問わず、養殖・食品・医薬品分野との原料獲得競争が強まれば、国産原料を含むオメガ3(DHA・EPA)市場全体の調達環境にも中長期的な影響が及ぶ可能性があります。
日本がこれまで培ってきたオメガ3供給基盤は、今後も大きな強みであり続けると考えられます。その強みを将来にわたって維持・発展させるために、単一の供給源への依存を避け、魚油(フィッシュオイル)、クリルオイル、藻類由来オメガ3を含めた多様な供給戦略について検討していくことが、ますます重要になるのではないでしょうか。
以下に掲載するホワイトペーパーは、今後のオメガ3(DHA・EPA)供給を考えるうえで重要な示唆を含んでいます。本資料が、日本の健康食品メーカー、食品メーカー、原料メーカーの皆様にとって、中長期的な事業戦略や原料調達戦略を検討する際の参考となれば幸いです。
本件に関するお問合せ先
アーケル・バイオマリン・ジャパン株式会社(担当:北澤)
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