オメガ3原料(DHA・EPA)の将来リスクに備える ~ウェビナー・日本語ダイジェスト~
~ウェビナー・日本語ダイジェスト~
Omega-3 Diversification: Future-Proofing Your Supply
Presented by: NutraIngredients & Aker BioMarine
今号では、NutraIngredients社、Aker BioMarine社の共催で実施したウェビナー:Omega-3 Diversification: Future-Proofing Your Supply(英語)の日本語ダイジェストをお届けいたします。
オメガ3業界ではここ数年、供給網の混乱や価格上昇に加え、フィッシュオイル(魚油)を安定して調達できるのかという不透明感も高まっています。こうした中、NutraIngredients Spotlight「Omega-3 Diversification: Future-Proofing Your Supply」ウェビナーでは、オメガ3市場が大きな転換点を迎えているとの指摘がありました。今後は、一つのオメガ3原料に依存した調達では、製品を安定して供給していくことが難しくなる可能性があります。
これからのオメガ3原料の調達では、価格だけでなく、必要な原料を必要なときに確保できるかどうかが重要になっています。製品の生産・供給を継続するには、特定の原料や供給源に依存しない調達体制を整えておくことが欠かせません。調達先の多様化は、目の前の市場変動に対応するための一時的な対策ではなく、将来にわたって原料を安定して確保するための重要な選択肢となっています。
現在の供給環境をめぐる問題は、2023年のエルニーニョ現象から続いています。2023年のエルニーニョは、世界有数のフィッシュオイル供給源であるペルーのアンチョビ漁業に大きな影響を及ぼしました。当時は、すでに確保されていた在庫によって供給不足の影響をある程度補うことができました。しかし、その後も在庫は十分に回復していません。
KontaliのChief AnalystであるPhilip Scrase氏は、ウェビナーで、2023年当時のように在庫で不足分を補える余裕がない中、再び供給の混乱に直面していると説明しました。すでに、その影響は市場にも表れ始めています。
ペルーでは、第1漁期の漁獲枠が36%削減されましたが、実際の漁獲量は削減後の漁獲枠の約25%にとどまりました。第2漁期の見通しも依然として不透明で、フィッシュオイルの主要供給源の一つであるペルーのアンチョビ漁業には、引き続き供給上の懸念が残っています。
さらに、供給上の制約はペルーだけの問題ではありません。他の漁業でも供給が限られる状況が続いています。例えば、北大西洋で漁獲される今年のブルーホワイティング(日本名:プタスダラ)の漁獲量は50%以上減少しています。他の地域の漁業もそれぞれ供給上の課題を抱えています。
一時的な供給不足ではない。オメガ3市場で需給の変化が進む
大規模な気候変動による供給混乱が起きなくても、オメガ3市場の需給環境そのものが変化しています。Aker BioMarineでHuman Health Ingredients部門のCEO, Simon Seward氏は、世界のフィッシュオイル(魚油)生産量が約120万トンで比較的安定している一方、2027年頃からは需要が供給を上回る状態が続くと予想されていると指摘しました。
つまり、現在の市場が直面しているのは、一時的な供給不足だけではありません。今後も需要が供給を上回る状況が続けば、原料の確保が難しくなる可能性があります。こうした変化を見据え、これまでとは異なる供給体制を考えていく必要があります。
人口の高齢化や、オメガ3に対する関心の高まりも、需要を押し上げる要因となっています。一方、供給が限られると、サプリメントメーカー同士だけでなく、水産養殖もフィッシュオイルをめぐって競合することになります。
世界のフィッシュオイル需要の約80%は水産養殖業向けで、サプリメント、機能性食品、医薬品などの人向けの栄養用途は約16%に過ぎません。
水産養殖向け飼料メーカーは、サプリメントなどの人向け用途と比べて、はるかに大きな規模でフィッシュオイル(魚油)を調達しています。また、価格の決まり方にも違いがあります。養殖飼料では通常、価格が四半期ごとに設定されるため、供給が逼迫すると価格を迅速に見直し、積極的に調達することができます。
一方、オメガ3サプリメント業界では、通常3~12カ月程度の固定価格契約が結ばれ、4~6カ月程度が一般的です。こうした契約によって短期的な価格は安定しますが、契約更新の際に、市場の価格変動がより大きく影響することになります。
そのため、サプリメントメーカーにとって大きなリスクとなるのは、日々の調達競争で買い負けることではありません。供給が限られる中、より大きな規模で調達する買い手が供給量の多くを確保することで、契約更新時に原料コストが大きく上昇する可能性があることです。
新たなEPA・DHA原料の選定から、評価、製品への導入までには時間がかかります。Aker BioMarineのCEOであるMatts Johansen氏は「供給不足が深刻になってから対応を始めると、ブランドが取れる選択肢は限られてしまう」と指摘しています。いま、原料調達において問題となっているのは、価格だけではありません。
これまでフィッシュオイルの供給をめぐる議論では、価格が大きなテーマとなってきました。しかし現在は、価格だけでなく、製品の生産を続けるために必要な量のオメガ3原料を安定して確保できるかどうかが、より重要な課題になっています。
価格変動の影響を抑えるための対策は、市場の変動に対応するうえで役立ちますが、必要な原料を安定して確保するという根本的な課題を解決するものではありません。GOEDのManaging DirectorであるEllen Schutt氏も、価格変動や供給制約に対応するための取り組みがすでに進められている一方で、必要な原料を安定して確保できる状況が整ったわけではないと強調しました。
調達先の多様化が、供給を安定させるうえで重要になっています。これまでの供給混乱を振り返ると、問題が起きてから対応するのではなく、あらかじめ複数の調達先を確保し、柔軟に対応できる体制を整えておくことが重要だと分かります。
市場の変動に比較的柔軟に対応できたブランドには、複数の調達先を確保していたこと、原料サプライヤーや委託製造会社と緊密に連携していたこと、供給混乱に備えて在庫を確保していたこと、そして原料の変更にも対応しやすい製剤設計を採用していたことなどの共通点がありました。
TasaのCommercial DirectorであるGonzalo Caceres氏も、フィッシュオイル(魚油)がなくなるわけではない一方で、これだけに依存した供給体制を続けることは難しいと指摘しています。
クリルや藻類を新たなオメガ3原料として取り入れることで、一つの供給源への依存を減らし、市場環境が変化した場合にも調達先を切り替えやすくなります。また、海洋由来原料を扱う業界では、供給混乱が起こる可能性を踏まえ、サプライヤーと連携しながら、クリルや藻類を含めた複数の原料について、サプライチェーン全体で適切な在庫を確保しておくことも重要です。
重要なのは、ある原料を別の原料に置き換えることだけではありません。一つの供給源に問題が生じた場合でも製品供給への影響を抑えられるよう、複数の調達手段を確保しておくことが重要です。さらに、こうした選択肢を持つことは、新たな製品開発や差別化にもつながります。
Seward氏はさらに、オメガ3業界では、一つの供給源に依存する時代が終わりつつあるとの見方を示しています。
こうした点への対応を早めに進めておくほど、将来取れる選択肢は増えます。調達先の多様化は、市場が逼迫してから検討する対策ではありません。長期的な製品開発や原料調達、安定した供給体制を考える段階から、あらかじめ組み込んでおくことが重要です。
フィッシュオイル(魚油)をめぐる供給問題は、より大きな課題へと広がっています。エルニーニョ現象やペルーのアンチョビ漁獲量、価格上昇をめぐる問題から、予測が難しくなっている市場環境の中で、オメガ3業界がどのように安定した供給を維持していくかが問われるようになっています。
今回のウェビナーでは、次の供給不足に備えるだけではなく、供給を安定させるための体制そのものを見直す必要があるとの指摘がありました。
供給が豊富で予測しやすかった時代には、一つの供給源に依存する調達戦略も機能していました。しかしこれからのオメガ3ブランドには、市場環境の変化に柔軟に対応できる供給戦略が求められます。
本件に関するお問合せ先
アーケル・バイオマリン・ジャパン株式会社(担当:北澤)
Tel: 03-6894-4156
e-mail: info.japan@akerbiomarine.com











